知ってほしい「生産者の今」株式会社寺部食品　～地域の味を守り続ける豆腐～

身近な商品値上げの中で、コープの商品を生産してくださっている生産者のみなさんの「今」をレポートしました。　

「生産者の今」株式会社寺部食品（豊川市）　～地域の味を守り続ける豆腐～　木綿豆腐・ソフト豆腐

■変わらない製造方法と原材料

▲左から土佐徳孝（とさ　のりゆき）さん、寺部幸祐（てらべ　こうすけ）さん

創業74年になる寺部食品とコープあいちとのお付き合いは、合併前のみかわ市民生協設立時から、半世紀近くになります。「添加物を減らしたおいしい豆腐」を求めた組合員の声に応えて、全国の生協に先駆け豆腐の共同購入が実現しました。

生協の木綿豆腐が誕生したころと比べ、やわらかな豆腐が好まれるようになり、それに合わせて商品を変えていく流れが豆腐業界にあります。そんな中、寺部食品の木綿豆腐には交流会などで「寺部にしかない味だね」という声を聞くそうです。それは開発当初と同じ作り方、同じ原材料で味を守り続けているからです。毎日食べるものはやがて地域の味になり、自分たちの味になります。寺部食品では、地域の味を守ることは大切なことだと考えています。

■おいしさの決め手は職人の手

豆腐の製造は職人の技が生きる昔ながらの製造方法です。生協の木綿豆腐の大豆は、カタログには国産とだけ書かれていますが、地域の味は地域で取れる大豆が生み出すことから、愛知県産を使用しています。その豆を水につけてふやかすのですが、豆の状態、気温（水温）で時間を調整します。これは職人が経験による感覚で決めています。次に十分水を吸った豆を細かく砕き煮沸し、おからと豆乳に分けます。ここでも職人が豆に触って固さを確認し、煮る時間を判断しています。最後ににがり（凝固剤）を添加し豆腐にしていきますが、職人が豆腐を触った時の固さによって、その量を調整しています。寺部食品の豆腐が一つひとつ手作りと言われる所以です。頑なにこの製法を続けるのは、日持ちしなくても見た目が悪くてもいい、おいしいもの届けたいという一途な思いからです。

▲要所に職人がかかわって出来上がり、型から出た豆腐。こののち、カット・包装され検査を受ける

■大豆の価格高騰の背景

いろいろな食品の値が上がる中、豆腐はあまり変化していません。しかし、世界的な小麦不足は豆腐の原材料である大豆にも影響を与えています。以前から遺伝子組み換え混入防止管理済み（※）の大豆は、作りやすい遺伝子組み換え大豆に切り替える生産者が増えたため、全体量が減ってきていました。そこに来て今回の小麦不足で大豆から小麦への転作が増え、大豆はますます少なくなってしまいました。そのため輸入大豆の価格は2倍を超えています。これは一部の国産大豆とほぼ同じ価格です。

では国産大豆はというと、これまでは大きく変化していませんでした。しかし価格の差が少なくなってくると、輸入大豆から国産大豆にシフトするメーカーが増えて、国産大豆の価格も上がってくるのではと危惧しています。

寺部食品の寺部さんは「大豆だけでなく、資材・容器も少しずつ値上がり、6～7割程度高くなっています。大豆の仕入れが大変になり、経費の削減など従業員と一緒にここまでやるのかというほどの努力をしてきました」と話されました。

※遺伝子組換えの混入を防ぐために生産、流通、製造加工の各段階において遺伝子組換えのものと分けて管理されているという意味

▲工場の始業は深夜。正午には製造が終わり翌日には組合員の元へ

■企業努力を支えているもの

生協のソフト豆腐とツインパックの原材料は東海3県の大豆としていますが、これまで愛知県産のみで製造してきました。それは、組合員との長いお付き合いから生まれた信頼にこたえる姿勢があるからです。「交流会などでのみなさんとの会話には気づきがあります。顔を見て話して伝えられたら、これまでやってきたことへの自信につながり、よいものを作っていける励みになります。いつの日か従業員が組合員と直接交流できる日が来たらうれしい」と土佐さん。「小さくても強い会社をめざし、これからも最大限の努力を続けていきたい」とも話されていました。

（2023年6月取材）