知ってほしい「生産者の今」 ~せいきょう牛乳・生協たまご・産直若鶏~
身近な商品値上げの中で、コープの商品を生産してくださっている生産者のみなさんの「今」をレポートしました。
「生産者の今」美濃酪連 ~せいきょう牛乳~
■組合員と一緒に育ててきた牛乳
1960年代末はヤシ油を混ぜた加工乳が出回っていました。1970年初頭「本物の牛乳が飲みたい」と始まった組合員の活動。組合員が生産者と話し合い、酪農の問題なども考えながら、大切に育ててきたのが「せいきょう牛乳」です。成分を調整した牛乳が「牛乳」と呼ばれていた時代に、組合員の意見・要望で成分無調整の牛乳を開発しました。
生産者の顔が見える、地元の指定酪農家が生産したものだけを使用している「せいきょう牛乳」。どこでとれた牛乳なのかはっきりしていること、地元の牧場ゆえに運搬距離も短く、新鮮な生乳から作られる「安全・安心」な牛乳です。
▲自動でえさを牛に近づける機械。導入によって人手を抑えることができた |
■すべてが高騰する中で
今回お話をうかがった、ムトー牧場の武藤友仁(むとう ともひと)さんは、牛のえさに遺伝子組み換えをしていないNon-GMOの飼料(とうもろこしや脱脂大豆など)を使用している酪農家です。3種類の牧草にNon-GMOの飼料をせいきょう牛乳専用に配合し、他にも消化を助ける酵素郡やビタミン剤、鉱塩など栄養バランスを工夫したえさを使用しています。食べているものが乳質・乳量に直結するため、えさにはこだわっています。
▲牛舎の天井に設置した巨大扇風機。6台設置したことで牛舎に風が流れ、涼しくなった |
ムトー牧場は飼料、牧草とも全量購入※です。昨今、飼料費や水道光熱費などの高騰は、武藤さんたち酪農家を直撃しました。えさに関しては、キロ当たり20~40円の値上がりとなり、購入費は今までの1.5~2倍となりました。水道代や電気代が値上がりしたことで牛の飲む水はもちろん、牛舎の清掃に使用する水や、設備の電気代も打撃を受けています。
夏は牛も夏バテしてえさを食べなくなったり、水を多く飲むため乳が薄くなるなど乳質・乳量が下がります。近頃は設備を整え牛舎を涼しくしたことで乳質・乳量とも安定してきたところだったので、光熱費などの高騰には頭を抱えてしまいました。
酪農家の高齢化による後継者不足に、今回の諸々の値上げが拍車をかけ、廃業する酪農家も多く、この7月もNon-GMOを使用していた酪農家が3軒廃業されたそうです。※牧草を栽培し自給している酪農家もいる
▲左から、美濃酪連 武藤さん、ムトー牧場 武藤さん、美濃酪連 和田さん、美濃酪連 籏さん |
■ 安全・安心な牛乳を届けたい
「子どもには安全なものを食べさせたい」という思いから、「飼料や牧草が高騰しても、手に入りやすい飼料に変更することはないです」と言う武藤さん。先の見えない状況ですが「飲んでくれる組合員のみなさんのことを思いながら、牛を育て牛乳を搾らなければいけない」という思いで、日々牛の世話をされています。「牛乳を飲んでくれること、料理で使ってもらうことが酪農家のやりがいにつながります」と話してくれました。
美濃酪連※の武藤伸彦(むとう のぶひこ)さんも「交流会ができない今、組合員のみなさんに会えず、直接お話しできませんが、オンラインなどで生産者の話を聞いてもらうなどして、これからも酪農家、職員一丸となって、変わらない安心とおいしさをお届けできるよう努力していきます」と話されました。
※美濃酪農農業協同組合連合会…「美濃せいきょう牛乳」の製造・販売をする組合
「生産者の今」 デイリーファーム ~生協たまご~
たまごの利用を通じて、取り組みを応援してください!
■飼料の高騰で鶏のえさ代が1.8倍に
▲左から市田真澄社長、市田旭宏専務、吉田伸夫主任 |
栄養価も高く、価格の変動も少ない、私たちの食生活に欠かすことのできない「たまご」。その「たまご」を生む鶏のえさ(配合飼料)のほとんどは海外に依存しています。
近年、中国での需要の高まりやウクライナ情勢による穀物価格の高騰、原油高などで、配合飼料価格は2021年12月~2022年7月には約1.8倍に上がりました。鶏が食べるえさ代は、卵の生産にかかる費用全体の約50%。たまご1kgを作るのに、飼料3kgが必要です。そのため飼料価格の高騰は生産者にとって大きな痛手です。
「飼料高騰を価格にそのまま転嫁すると、単純計算でも10個入りパックを45円上げることになります。でもそれは容易なことではありません」。「生協たまご」「生協赤たまご」「あいちの米たまご」を出荷するデイリーファームの市田社長は、たまごの値上げが利用のブレーキにつながることを心配しています。
■健康なたまごは、健康な親鶏から
安全・安心なたまご作りで最も大切なのは、鶏が食べる「安全な飼料」。生き物は食べ物により体をつくります。たまごは鶏から産み出されるので、親鶏が毎日食べるえさがとても重要なのです。配合飼料の主原料は「トウモロコシ」と「大豆」ですが、飼料用としては、現在日本ではほぼすべてが輸入され、その93%以上はGMO(遺伝子組み換え)と言われています。
そんな中で、デイリーファームでは、飼料の主原料は分別生産流通管理済み※1の穀物にしています。また、鶏が病気の時も抗生物質は使わず、体内によい菌を補ったえさを追加するなど、時間はかかってもよい菌が悪い菌を追い出すようにします。鶏の健康とたまごの安全性を第一に考え、虫が発生した時も殺虫剤は使いません。
毎日食べるたまごだから、目に見えないところもていねいに気を配って、安全・安心に取り組んでいます。
※1:遺伝子組換えの混入を防ぐための生産、流通、製造加工の各段階において遺伝子組換えのものと分けて管理されているという意味
■飼料米の取り組みで、日本の農業を元気に
日本では、鶏の飼料(えさ)の自給率は5%以下しかなく、そのほとんどを海外に頼っています。生産国が不作に陥ると、輸出を制限されるなどのリスクがあります。デイリーファームでは、地元の米農家の方の協力で、飼料米を鶏のえさに取り入れた『あいちの米たまご』を生産しています。
▲毎日食べるたまごだから安全・安心に自信を持って |
高齢化などで米を作る農家が減り、増えた耕作放棄地(使われていない田)を活用した飼料米づくりは、海外依存のリスクを分散させ、日本の水田を守ることにつながります。1週間に1パック(10ケ入)『あいちの米たまご』をご家庭で消費することで田んぼが4坪守られます。また、米農家に鶏糞を肥料に使用してもらうことで、持続可能な農業の地域循環サイクルができます。
国産飼料で家畜を育てると、輸入飼料に比べてコストがかかる場合がありますが、食の安全・地産地消・資源循環の実現につながります。この取り組みは、生協ならではで、組合員のみなさんの利用が少ないとつづけることができません。
飼料米で育った『あいちの米たまご』を利用して、あなたもその取り組みに参加しませんか?
■組合員のみなさんへお伝えしたいこと
デイリーファームではこのような現状の中でも、安全・安心の品質は変わらず、大きな値上げとならないように、効率よく作業をして生産性を上げる工夫をしています。こうした生産者の見えない努力は、「利用してくれる組合員のみなさんがいるからこそできる」と市田社長は言います。
「1個でも多くたまごを食べてください。それが農家への応援の一票です。私たちはいつでも安全・安心を最優先に愚直にがんばっています。今日利用していただくことが、今後を支え、将来も変わらず利用できることにつながります」。
変わらぬ利用を今後も!
「生産者の今」 トーノーデリカ ~産直若鶏~
▲トーノーデリカ 荒井 幹広 社長 |
■飼料高騰の現状
業界的に厳しくなっているのは乳牛、卵、鶏。近年、輸入の鶏肉は約2倍に値上がりしています。外国産の鶏肉を扱うところは、それ以外仕入れができないため、買い付ける業者が値上げを受けざるを得ません。しかし国産鶏肉については、スーパーなどのバイヤーは消費者に買ってほしいため最近は相場とは連動しない状況にあります。
2020年ごろから飼料価格は、これまでに経験のない高騰が続いており、4万円/t以上、上がっている状況です。また問題なのは、今のこの状況が終わりかどうか分からないということです。高騰している飼料価格の先行きが見えない不安が畜産業界に広がっています。そんな状況の中で、泣く泣く生鳥価格について協力を求めた養鶏農家もありました。また、飼料配合メーカーに価格を交渉したりしてきました。自助努力としては、加工品への付加価値を付けて販売したり、産直若鶏(恵那鶏)が健康で、また経営的にも成績のよい鶏になるよう、飼育に対して真摯に取り組んでいます。
■たすけあいの精神
生産側のコストに見合う販売価格に、ご協力をお願いしたい。飼料価格の状況や価格に対しても、こうして話を聞いてもらえるのは、ありがたいです。価格を上げるということは、お互いに身を切る思いで行うことになります。 飼料価格が高騰した分を誰も請け負わなければ、最終的に商品を利用する組合員にしわ寄せが行き、利用していただけない価格になってしまいます。生産者、生産加工メーカー、利用する組合員がたすけあいの精神で、高騰分を少しずつ負担し生産・加工・利用の循環を作ることが大切だと考えています。
高く売りたくて値上げをしている訳ではありません。なぜ値上がりしているのか?値上げの現状や背景をぜひ知っていただきたいと思います おいしくて、安全な鶏を作るのが生産者の使命です。健康で安心して食べられる鶏であること、安全・安心を意識した子どもに食べさせたい鶏。食を通じて幸せづくりを応援していきたいと考えています。
■あらためて伝えたい「産直若鶏」の価値
コープの産直若鶏を一手に担うトーノーデリカは、コープあいちと共に(1968年旧めいきん生協立ち上げ時より)長く商品開発をすすめてきました。契約農家のほか直営農場を持ち、生産・加工から提供まで一貫した体制で品質を高めるように努めています。
▲一般の若鶏が1坪当たり60羽の飼育スペースに対し産直若鶏は45羽(夏季は40羽)。太陽の光が注ぐ鶏舎の中、平飼いで育てる |
産直若鶏の飼料には、病気予防のための抗生物質や抗菌剤を一切添加せず※、乳酸菌や納豆菌などの有用微生物群を一緒に与えることで腸内を整えています。1坪当たりの飼育数を減らした広いスペースの飼育環境で、のびのびと育った鶏は身が引き締まり、脂肪が少ないのが特長です。 ※ 法定伝染病予防の目的でワクチンを投与しています
鶏肉が一番おいしいのは、8~48時間以内といわれます。急速冷凍用トンネルフリーザーを設置するなどして、この「一番おいしい時間」に加工しお届けしており、ご家庭で解凍したときが一番おいしくなるように、うま味を肉に閉じ込めています。お店には冷蔵で最短処理した翌日に届き、鮮度は抜群です。
▲解体から袋詰めまで一つずつ人の手で作業しながら、細かな骨や筋が残っていないか何度も確認 |
■食べてもらえば絶対に分かるおいしさ
産直若鶏が本来持っているよさを知ってもらうために、まずは「手に取って食べてもらうこと」が大切と考えています。その後においしさの裏側を知ってもらえば、価格に見合う理由やこだわりの産直若鶏であることを理解してもらえると考えています。これまで交流会や産地工場見学などで多くの組合員と交流し、思いを伝え、声を聞いてきました。宅配用のモモ肉の皮や脂肪部分を、一般向けより少なくなるよう手作業で取り除いているのも組合員の声からです。薬を与えない飼育は手間がかかりますが、組合員の求める商品を作り続けられるように努めています。
■付加価値のある加工品作り
「はぐくみ自慢の鶏で作ったチキンカツ」などの加工品も開発し、商品化しています。 秋以降には、「はぐくみ自慢の鶏モモ肉と国産野菜の酢鶏セット」が新登場の予定。野菜とセットしたミールキット商品も開発に力を入れています。
そのほかのくらしを支える「作り手たち」もご覧ください♪
組合員情報誌「ウィズコープ」では11月号から、その他の生産者のみなさんを紹介します。
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コープあいち