おしらせ

2013.12.28

「農薬のリスク」について学ぶシンポジウムを開催しました。

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   1220日(金)「農薬とは? おいしい農産物とは?」と題し、
4回「学び語り合う会」を開催しました。
各生協の役職員、取引先、マスコミ関係者などより
117名の参加がありました。

 「農薬リスクについて」をテーマに
田村廣人氏(名城大学農学部環境科学科教授)の講演をいただき、
管理(行政)、生産(
JA、生産団体)、生協(組合員、検査)など
立場の違うパネラーを中心に意見交換がおこなわれました。
 会終了後も、積極的に意見交換する参加者の姿が見られました。

 
                   

リスクとハザード/ゼロリスク 

食に限らず私たちの「安全」を考えるには「リスク」と「ハザード」を知り、
その「リスク」と「ベネフィット」のバランスを考えることが大切です。
食品にも「栄養成分」とともにわずかながらも「危害要因」が含まれ、
「ゼロリスク」はないということを知っておきましょう。「リスク」を評価
していかに低く抑えるかが大切です。
 

農薬のリスク 

例えば農薬を使わない野菜でもDNAに影響を与える変異原性物質が含まれ
ます。キャベツには「アリルイソチオシアネート」という物質が存在します
が、「ベネフィット」として抗がん抗菌作用、「リスク」として変異原性・
溶血性貧血があります。安心だろうと思う食品にもこのようにハザードが
存在するのです。

 

農薬の毒性影響と試験と残留農薬 

農薬を科学的に評価するために、様々な毒性試験と代謝及び分解試験が行な
われています。毒性試験とは用量反応関係を調べ、ヒトに対する危険性を予
測するための試験です。慢性毒性試験では農薬をマウスなどに1〜2年間、
いろいろな用量パターンで投与し、全く影響の出ない用量「無毒性量
(NOAEL)」が求めています。発がん性、慢性毒性、繁殖毒性、催奇形
性の無毒性量の中から最も低い値が設定されます。これをヒトに当てはめる
ために、安全係数(100)で割った数値を「一日摂取許容量(ADI)」
として安全な量が定められます。これが違反事例などでよく報じられる値です。
摂取量と生体影響の関係は、無影響→無毒性量→作用量→中毒量→致死量と
いう段階を経ていきます。「医薬品」や「調味料」は作用量を使わないと意味
がありません。農薬の残留基準は作用量より低い無毒性量に設定されるのです。
農薬にはすべて適用作物が定められますが、それぞれの作物に残留基準値が
設定されます。国民栄養調査から平均的な穀物など摂取量を調査し、適用作物
全体を足し合わせてADIの8割程度になるように管理されているのです。 

 

基準値の考え方と健康被害 

残留基準値は農薬を正しく使用するという管理上のものとしてとらえたほうが
良いでしょう。残留基準値を超えた場合の急性毒性という視点での健康被害と
いう意味では、「急性参照用量(ARfD)」という数値を参照すべきです。
日本ではまだいくつかの農薬にしか設定されていませんのでこれからの課題
です。 

 
 

安心のためのコミュニケーション 

世界的に穀物の収穫面積も収穫量も増えていません。
人口は増え続け2050年に89億人になると言われています。食糧をどう
調達するかが大きな問題です。農作物の病害虫雑草による平均減収率という
数値があります。イネ46%・トウモロコシ35%などです。種子から
100%収穫できていないということです。農薬を使って減収率を下げると
いうことも、将来にわたって食糧を得るという視点が必要かもしれません。
生協でリスクコミュニケーションという場を作り「安心」につなげられる
論議ができればいいと思います。

 

<パネルディスカッション>

 5名のパネリストより報告があり、ディスカッションをおこない、
見識を深め合いました。

 

斎藤勲氏 

東海コープ商品検査センター 
技術顧問

 
 
農薬とは農業生産の中で作物を適切に育てるために、
適正量を使用するものです。農薬ひとくくりにして論議されますが、大きくは殺虫剤、殺菌剤、除草剤です。
 東海コープ2000年からの農薬検査をまとめると、残留している実際の量は残留基準値に比べかなり低いことがわかりました。
「イミダクロプリドという殺虫剤は、小麦での基準が0.05ppmなので、0.06ppm検出されると違反になりますが、お米の基準は1ppmと散布の仕方も変わるのでバラバラです。小麦での0.06ppmは、本来は不適切な農薬の使い方の問題です。農薬の適用作物以外の基準がないものは、食品衛生法で一律基準0.01ppmを設定しています。これを超えたものは「販売の用に供してはならない」ことになっているので、0.02ppm検出されると販売することができなくなるのです。一律基準の運用については今後論議していいと思います。健康影響のない食品の廃棄のあり方は考えていかなければいけないと思います。
 



東光俊氏
 
東海農政局 
消費・安全部安全管理課長

 農政局は農林水産省の地方組織で、農薬の使用状況と残留状況の調査を行っています。23年度は米・ムギ・大豆・野菜果物の生産者4665戸に協力いただき、適正な作物・適切な時期等に使用されたかをチェックしました。内16戸の農家が適用作物、使用量・希釈倍数、使用時期、使用回数で不適正でしたので、農家への指導を行い、調査結果は関係する県に連絡しました。残留状況の調査は出荷段階1990検体を検査し、すべての残留濃度が基準値以下でした。




鈴木博俊氏
 
JAあいち経済連 
営農支援センター所長

 「残留基準値のふしぎ」をお話します。
殺虫剤のフルベンジアミド(フェニックス)の残留基準値はレタスは15ppm、小松菜は適用作物ではなく、残留基準値がないので一律基準の0.01ppmが適用されます。登録があるかないかの違いで1500倍もの違いがあるのです。同じ畑で作っていたら、小松菜にドリフト(風などによる目的以外の作物への付着)すると、小松菜は基準値超過で出荷できなくなります。適用があるかないかでこのような大きな違いとなってしまいます。食の安全をトータルで考えると、農薬よりも微生物による食中毒が厳しい状況になっています。JAグループ愛知では今後、食品衛生管理についても強化する方向で検討していきます。




佐伯昌彦氏 

株式会社マルタ 代表取締役社長


 
 農業生産の目的は安定生産と安全です。
かつて、生産者自身の農薬中毒など適用量の間違いから消費者への不安につながりました。環境汚染の問題ともなりました。耐性菌・虫の発生で新剤との「いたちごっこ」にもなっています。今、IPM(総合的病害虫管理)で経営を脅かすようになったら農薬を使うという考え方がでてきました。発生予察で圃場をよく見て判断することです。粘着板、捕虫網、天候データを駆使し、農薬に頼る前に耕種的防除をし、農薬を使う場合には最低限にします。防除に天敵を使うこともあります。

最近脚光を浴びているのはエンドファイト(植物共生菌)です。微生物の中には栄養・酸素・ホルモン・病害虫防御などに役立つものがいます。これらをもっと上手に使う発想が生まれてきているのです。農業は複雑な環境で成り立っていて、光・温度・水質など、肥料や農薬で環境が変わることもあるので多様性を保つことを考えています。また、おいしさと微生物の関わりも大きいものがあります。1000年前から日本にいたアスペルギルス・オリゼ(コウジカビ)とアフラトキシン(カビ毒)は紙一重で近縁関係です。まだまだわからない微生物の世界の研究を活用していきたいと考えています。




林智子氏
 
コープぎふ理事

 利用する立場として、総代さん対象に意識調査を実施しました。農薬について、頭では理解しつつも気持の上では安心しきっていないと思われ、リスクの現状がどうであるかを正しく理解することが大切とまとめました。おいしさ・品質がいいとなれば次も買ってみようと思います。産地とのコミュニケーションが深まれば安心感が高まります。栽培自慢は目指していることと実際の利用とのかい離があるので、もっと論議をしていかなければと思います。

   

 


 

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